LONG PARTY RECORDS

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【第18回 横堀つばさ(ライター)編】LONG PARTY RECORDS 年末企画"2025年何聴いてた?"

2025年ももうすぐ終わり!
LONG PARTY RECORDSではお世話になってるバンドマン / 裏方さんに2025年リリースの作品で3枚ディグってもらいました!

第18回 横堀つばさ(ライター)

❶ Bon Iver「SABLE, fABLE」

→春という言葉を聞くと、見たこともない深い森のことを思い浮かべます。
ざわめく木々の隙間から漏れ出る光を浴びた、ふきのとうが瞼の裏によぎります。

シャキシャキとしたそれは、暖かくなるにつれて本来の柔らかさを取り戻していくのでしょう。霜が解けた昼間の泥濘みたいに。
Bon Iverが約6年ぶりに産み落としたアルバムには、そんな生命の気配と復興が根を張っていました。ほのかに響き続ける厳かな音の上で独白が紡がれる「AWARDS SEASON」から、42秒付近で打ち鳴らされる数音で一気に地平を拓く「Short Story」を経て、「Everything Is Peaceful Love」へ至る流れは圧巻。

あまりにも忙しい毎日の中で自分の心音に耳を傾け、陽だまりを肺一杯に吸い込み、あるべき姿を取り戻していく。幸せは、こんなにもたおやかで、穏やかで、瑞々しい。

❷ yubiori「yubiori2」

→<朝起きて 働いて 家路を急ぐ たまに君の歌を口ずさんで>(「いつか」)。
寝癖をつけたまま昼下がりに起きていた学生生活が終わりを迎えた2025年、何度この一節を満員電車で口ずさんだことか。

各所に用意されていた入学や卒業という停車駅も、優等生なんて肩書きも無くなり、リフレインされる日々に呑まれて1年は瞬く間に過ぎ去るようになった。ここからは自分でゴールをぶっ立てて、のたうち回りながら進んでいくしかないんだと、時折怖くなります。
そして、荒野を歩く中で、やりたいことや輝かしい記憶が埋もれていくかもしれないと悲しくなったり。でも、それでも。
心を擦り減らす毎日を問い、生まれたばかりの風に再起の誓いを託す「Maxとき」や、遠き街々と友を想い、健やかに暮らせと祈りを捧げる「せめてそれだけ」をはじめ、yubioriによる2ndアルバムにはギターとバンドに恋焦がれ、暮らしと衝動を抱きしめる大きな背中が収められていました。いつまでもドキドキとキラキラとトキメキだけを追い求めていたい。強くそう思う1枚です。

❸ Danablu「After the Rain E.P」

→大阪の3ピースバンド・Danabluが約2年ぶりにドロップしたEP。
4分で心臓を揺らすバスドラムと豪雨さながらに降り注ぐシンバルの隙間を突き抜けるギターで幕を上げるタイトル曲「After the Rain」が滾ること、滾ること。

会場限定でリリースした前作『Second March』にも表れている通り、3人は何を信じたいのか、どうありたいのかを見つめ直し、
理想像を色や季節と重ね合わせてきたわけだが、今作では<Find out how am I little>(「After the Rain」)、<But I can see it something precious than anything.>(「Twenty Hundred」)とそのアンサーが打ち出されている。
自身の矮小さに気づき、何よりも大切なものに気づいたと言い切ることができたからこその爽快さとエネルギー。晴れ間が覗く、なんて言葉が似合う作品です。

🎵「2025年これ聴いてた!」プレイリスト
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