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【第51回 横堀つばさ(ライター)編】LONG PARTY RECORDS 年末企画"2024年何聴いてた?"

2024年ももうすぐ終わり!
LONG PARTY RECORDSではお世話になってるバンドマン / 裏方さんに2024年リリースの作品で3枚ディグってもらいました!

第51回は横堀さん!(ライター)

1.さよならポエジー『SUNG LEGACY』

就職や結婚が近い未来になって、赤白帽を被っていたあの頃ほど未来の選択肢が無くなった気がします。
突飛のない夢を叶えることは難しくなって、既にいくつかの分岐点を過ぎてしまった。
「大人になりたくない」と願う毎日の中でこのアルバムを聴いた時、ふと「歳をとるって悪くないかも」と思いました。
何も築けていないことを自戒しながらも遺せる言葉をしたためようとする「きずかないまま」や、この瞬間に仕舞い込んだ記憶が遠き日の支えになることを歌う「半分になった俺たちへ」、朽ちていく中で自己の存在を見つけてほしいとささやかに願う「絶滅の途中で」。

自身は矮小な存在であるという諦観の下、それでも未来へ何かを託そうとする3人の姿は優しくて眩しい。
もしかしたら私が遺す言葉も先人たちの再生産なのかもしれませんが、死ぬまでにそっとどこかへ引っ掛かることを願ってやみません。

2.LINKIN PARK『From Zero』

今年もいろいろなバンドの復活のニュースがありましたが、個人的に凄く嬉しかった出来事がLINKIN PARKの復活でした。
『Meteora』と同じ年に生まれ、決して音楽に親しむのが早くなかった私にとって、彼らとの出会いは既にその時計が止まったあと。リアルタイムで彼らの音楽を聴くことができなかった事実はどこかで尾を引いていて、自信を持って「好きだ」と言えなかった気がします。
そんな中での復活と新たな出発は、胸を張って「このバンドが好き」と宣言するに足るキッカケでした。

再始動とは、その音楽と共に青春時代を過ごした方たちがあの頃へ戻る合図であるだけではなく、別軸に存在していた作品との思い出を同じ時間軸へ持ってくることなのかもしれません。
過去を昇華し、ゼロ地点からのキックオフを果たした新生LINKIN PARK。6人に「初めまして」を伝える上で、文句なしの1枚です。

3.えんぷてい『TIME』

えんぷていが5人体制として初めてリリースした自身にとって2枚目となるアルバム。
時間の不可逆性や愛を主題に据えた全10曲37分(これは1st『QUIET FRIENDS』と同じ曲数、同じ収録時間)は、乾いた喉を潤すみたいにじんわりと染み渡っていく。
1曲目「Turn Over」が最終曲「宇宙飛行士の恋人」と連続することで、砂時計をひっくり返すように幾度も聴き直してもらおうとする遊び心には、彼らのアルバムに対するこだわりが滲んでいて思わず握手を交わしたくなりました。
インタビューさせていただいた思い出も含め、どの曲も大切ですが、戻らない体温を激情と共に歌い上げる「あなたの全て」は何度流しても涙腺が緩みます。

横堀つばさ(ライター)

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